校内暴力のリスクを検出するAI – 米シンシナティ小児病院

生徒達がさらされている校内暴力は、物理的や口頭のもの、メールやSNSによる電子的なものまで多岐にわたる。暴力的な学習環境では退学率が高く・出席率が低く・学業成績が低下することが知られており、その対策や救済のため医療費や生産性の損失で社会にかかるコストは少なくない。リスクが高い生徒を特定するための正確で自動化されたスクリーニング技術の必要性が高まっている。

学術誌 International Journal of Medical Informaticsに、米シンシナティ小児病院の研究グループで開発された「校内暴力のリスクを検出するAI」が発表されている。89校から暴力の懸念の有無にかかわらず募集した131名の生徒にリスク評価尺度と質問紙を用いた面接を行い、自然言語処理(NLP)で特徴を抽出した。そこから機械学習(ML)で開発されたアルゴリズムは、校内暴力にさらされた生徒をAUC 0.94の精度で小児精神科医の評価と一致して検出できた。インタビュー内容から個別介入が望ましい思考・視点・行動・人間関係の力学のような予測因子が発見されている。

研究チームは今後の計画として、多施設共同研究と実際の教育現場への導入を模索している。児童の暴力やいじめは、ますます潜在的で複雑な構造化をみせていると考えられ、手動によるリスクの抽出は次第に困難になってきた。患者のニーズ増に対して、児童精神保健の現場は労働集約的なタスクに応えられなくなりつつある。同研究のような効果的で自動化されたシステムが課題を克服する助けとなり、青少年の心の健康と豊かな教育を担保する時代の到来を大いに期待したい。

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TOKYO analytica
TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。
The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。

1. M.Okamoto MD, MPH, MSc, PhD
信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、ロンドン大学ユニバーシティカレッジ(University College London)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員を経て、東京大学特任研究員など。専門はメディカルデータサイエンス。

2. T.Sugino MD
防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。