医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例片頭痛に対処するノルウェー発のAIアプリ

片頭痛に対処するノルウェー発のAIアプリ

片頭痛はズキンズキンという拍動性の痛みが発作的にやってきて、光と音に対する過敏症や嘔吐などを伴う、悩ましい頭痛の一種である。慢性的に片頭痛を抱える患者にとって各種薬物療法が一定の効果を示す。その一方で未解決の発生機序もあり、治療薬の効果が限定的であったり、小児・若年層への処方に消極的となる場合もある。AIアプリによる行動変容とトレーニングで片頭痛の問題を軽減しようとする試みが、ノルウェーで行われている。

オランダのメディアInnovation Originsの報道によると、アプリはノルウェー科学技術大学(NTNU)とSt. Olav’s大学病院の共同開発からのスピンオフとして、Nordic Brain Tech社によってリリースされた。このアプリではワイヤレスセンサーから心拍・筋緊張・体温変化などを受信し、頭痛発作と関わる神経系の活性化を記録する。アプリは頭痛ダイアリーも兼ねており、服薬状況・頭痛の強さや時間をユーザーが記録する。AIはセンサー情報と頭痛記録から患者にフィードバックすることができ、頭痛軽減のためのトレーニングを最適化する。

片頭痛対策のトレーニングは、毎日10分間ユーザーがセンサーからの情報をもとに心身をリラックスさせるというもの。ポイントを獲得するようなゲーム要素も組み込まれ、発作の予防を目指す。この方法の理論的根拠にはinstrumental conditioning、いわゆるオペラント条件づけに該当する心理学的アプローチがある。センサーから変調を察知して頭痛発生条件を回避するようなフィードバックを繰り返し、行動変容によって片頭痛の問題を減少させることを最大の報酬とする。特に、薬物療法に懸念のある小児・思春期の患者にとっての補助的治療法として、アプリが試されることを開発チームは期待している。近年、発展しつつあるデジタルセラピーとしても位置づけられるユニークな研究である。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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