医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例脳腫瘍を識別するAIのプライバシー保護 - Intelとペンシルバニア大学のFederated learning

脳腫瘍を識別するAIのプライバシー保護 – Intelとペンシルバニア大学のFederated learning

AIによる画像診断研究が進むなか、モデルの訓練と構築に大量の医療データにアクセスすることは欠かせない。しかし、そのデータは患者プライバシー保護の観点から非公開で保護される必要がある。脳腫瘍を検出する画像診断アルゴリズム開発のため、Intelと米ペンシルバニア大学は分散型機械学習アプローチであるFederated learningを適用している。

Intelの5月11日付けのニュースリリースによると、同プロジェクトで提携するペンシルバニア大学と29の医療機関では、Federated learningによって患者データを施設間では共有せずに施設内でセキュリティを保持してAIモデルの訓練をローカルに行う。各施設ごとに教育されたモデルは中央の集中型サーバーとの間で集約されて再調整を受け、共有や同期を繰り返す。その有効性は2018年にIntelとペンシルバニア大学から International MICCAI Brainlesion Workshopに発表され、データ共有型のモデルと同等の性能を示している。

真に有効なAIモデルのトレーニングには、単一機関で保持できないレベルの多様なデータを必要とすることが科学コミュニティで常識となってきた。一方で個人医療データという極めて高いレベルでのセキュリティ保護が常に課題となる。Intelの他、Google・NVIDIAらも同様の分散型学習アプローチで開発をすすめている。今後の医療AIにおけるスタンダードとなる可能性を秘めている。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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