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PCRを要さない新型コロナウイルス感染症の診断へ

英King’s College Londonと米マサチューセッツ総合病院、ヘルステック企業ZOEなどの共同研究チームは、症状に基づいて新型コロナウイルス感染症の有無を予測するアルゴリズムを開発した。研究成果は学術誌Nature Medicineに公開されている。

11日に公開されたチームの研究論文(短報として)によると、スマートフォンアプリを利用して収集した約260万人の症状データベースからモデルを構築したという。そのうち、18,401人は実際にPCR検査を受けており、ここから疾患の有無についてラベリングを行い、種々の症状から妥当な予測力を持つモデルを導いたとのこと。Medical DialoguesによるKing’s College LondonのTim Spector教授に対するインタビューでは「我々の成果からは、新型コロナウイルス感染症の重要な初期症状として、味覚・嗅覚の一時的喪失があることを示している。したがって、今後の疾患スクリーニングにはこの項目を含むべきだと考えている」とし、各国政府機関や保健当局に対して周知を進めることを明言する。

PCRは一般的検査ではないために施行可能な施設が限られていること、感度が十分でなく結果解釈が必ずしも容易ではないこと、などが問題となってきた。症状のみから高精度な予測を行うことは限りなく理想に近く、今回の研究成果は、今後の診断法確立への重要な足がかりになったと言える。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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