公衆衛生当局が示す新型コロナウイルス感染症対策での優先事項は、広く一般のコミュニティでの思惑と一致するとは限らない。人々が何に懸念を示しどう対処しようと計画しているか理解することは、公衆衛生の取り組みの成否を分ける。学術誌 Journal of General Internal Medicineに、ペンシルバニア大学の研究グループによって「オンラインディスカッションフォーラムにおけるCOVID-19に対する国民の優先事項と懸念事項」が発表された。
同研究では、米国で人気のオンライン掲示板Redditにおいて2020年3月に投稿されたCOVID-19関連94,467件のコメントを、機械学習による自然言語処理「潜在的ディリクレ配分法 (Latent Dirichlet Allocation: LDA)」で解析している。結果の一例として、Reddit上では3月中旬に外出の安全についての質問が急増していた。一方、米国疾病予防管理センター(CDC)は4月上旬まで公園や野外活動を安全に行うためのガイドラインを発行していなかった。研究グループは、オンライン上での国民の議論をもっと監視していれば、皆の関心のピークに近い時期にガイドラインが発行できた可能性があると考察している。
その他にも、手洗いの話題は3月3日から6日までの間にピークを迎えたことや、金銭面の不安は月初と比べ月末には議論が約50%多くなったこと、マスク着用については月初から月末まで話題の人気が維持されていた結果もみられた。一方、CDCから公共の場でのマスク着用勧告が出されたのは4月上旬であった。研究チームは「公衆衛生と人々の理解のギャップを認識することは、そのギャップを埋めるためのキャンペーンを展開する上で有用である」と主張しており、今後も追跡・分析を続けるという。