COVID-19パンデミック下にも腎移植は行うべきか? – 機械学習によるシミュレーション研究

米ジョンスホプキンス大学などの研究チームは、「COVID-19のパンデミック下に腎移植を行うこと」のリスクとベネフィットを探るシミュレーション研究を行った。研究成果はAmerican Journal of Transplantationに9日公開された。

チームの研究論文によると、多様な患者ケースに対しパンデミック下にも迅速な腎移植を行う場合と、パンデミックが収束するのを待って施行する場合とでの比較を行っている。機械学習モデルによって構築されたシミュレータでは、パンデミックの特徴(感染リスクや致命率)と移植遅延の程度がリスク/ベネフィットに対して最も大きな影響を与えていた。実際のシミュレータは公開されており、必要な項目を選択することで、迅速な腎移植施行と待機的施行とでどれだけ患者生存率に差が生まれるかを視覚的に捉えることができる(Kidney Transplant in the Context of the COVID-19 Pandemic)。

COVID-19パンデミック下においては、あらゆる臨床的意思決定に深刻な問題が生じた。実際、予定されていた多くの腎移植が延期となり、世界的に腎移植施行数の減少がみられている。この主たる理由は、リスクに対する理解が不十分であること、および意思決定に至る参照情報が不足していることにある。この種の支援ツールは、意思決定の最適化によって患者予後の改善に直接資する可能性があることから、臨床現場からの期待も大きく、疾患範囲の拡大と知見集積が強く望まれている。

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TOKYO analytica
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The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。

1. M.Okamoto MD, MPH, MSc, PhD
信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、ロンドン大学ユニバーシティカレッジ(University College London)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員を経て、東京大学特任研究員など。専門はメディカルデータサイエンス。

2. T.Sugino MD
防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。