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血液検査で悪性腫瘍を捉える – 血清タンパク質の推移からOPSCCを識別する機械学習モデル

韓国基礎科学研究所(KBSI)などの研究チームは、機械学習アルゴリズムを利用し、血清タンパク質の推移から口腔咽頭扁平上皮がん(OPSCC)を識別する手法を開発した。研究成果はがん疫学の専門誌Cancer Epidemiology, Biomarkers & Preventionに12日、オンライン公開された。

研究チームの論文によると、175名のOPSCC患者および同数の健常コントロールに対して、診断時と診断2年前および4年前、診断2年後のそれぞれで血清サンプルを取得し、縦断データベースを構築したという。先行研究から候補となる146のタンパク質を選択し、ランダムフォレストを用いて症例と対照を識別する分類器を導出した。なかでも13のタンパク質による分類器は高い識別精度を持ち、AUCで0.90を示すとともに、コントロール群においてはこれらのタンパク質が経時的な変動を示さないことも確認された。

OPSCCは喫煙・アルコール・HPV感染などが発症リスク因子として示されてきたが、極早期の発見を実現するスクリーニング手法はまだ得られていない。今回の研究成果は早期診断によるOPSCCの予後を直接的に改善する可能性があるとともに、我が国のように、健康診断における定期採血がルーチン化している国にとっては、スクリーニング手法の導入が容易であるためその意義は大きくなる。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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