インターベンション治療は単純レントゲンや超音波、CTなどを活用し、透視下において体表の小さな傷口から細いカテーテルを通していくことで、直接患部にアプローチする低侵襲治療である。米オハイオ州のバイオテックスタートアップであるMediView社は、3Dホログラムを用いた拡張現実により、インターベンション治療の革新を目指している。
インターベンション治療の専門家会議であるSociety of Interventional Radiologyの2020年度学術集会において、MediViewのパイロット研究が紹介された(COVID-19の流行に伴い会議はバーチャル実施)。米クリーブランドクリニックで進められる本研究では、マルチスライスCTで患者の身体各部に座標マーカーを仮想的に設置した上、MicrosoftのHoloLensと組み合わせた独自のARアプリケーションが活用されている。これにより、「解剖学的構造を正確にセグメント化したホログラム」を直接患者に投影することができるため、術中の視認性は劇的に向上する。本研究では肝腫瘍の経皮的焼灼術において試験されているが、医師は腫瘍位置を正確に見極めて周囲組織と区別できるのみでなく、電磁トラッキングによりアブレーションプローブを含む器具類もホログラム中に視覚化できるため、より効率的で安全な施術の実現が見込まれる。
現時点ではこのテクノロジーは実現可能性を精査している段階であり、パッケージ化したシステムとしては公開されていない。ただし、ARによる視覚補助、VRによる画像再構成は治療手技の質的向上を約束する技術として、次世代型治療を目指した研究計画が多方面に萌出している。