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脳卒中発症後における受診の遅れを予測する機械学習アルゴリズム

脳卒中は症状発現から受診までの時間が非常に重要となる。超急性期血栓溶解療法や血管内治療が発達した今日では、一刻も早い治療開始で患者予後を著明に改善することができる。中国・青島大学とハルビン医科大学の研究チームは、脳卒中リスクの高い集団において、発症から受診までの遅延を予測する機械学習アルゴリズムを構築した。

ピアレビューのオープンアクセスジャーナルであるBrain and Behaviorにて18日公開されたチームの研究論文によると、2018年11月から2019年7月にかけ、脳卒中で入院加療を行った450名のカルテ記録から機械学習アルゴリズムを導いたという。機械学習モデルにはサポートベクターマシンとベイジアンネットワークの2種を採用し、発症から受診まで3時間未満/以上の2値をアウトカム変数としてトレーニングを行った上で、古典的なロジスティック回帰モデルとの予測パフォーマンス比較を行った。いずれのモデルにおいても、平均AUCで0.80-0.85を示し、機械学習モデルとロジスティック回帰モデルとの間の差異は微小であることも確認された。

本研究には患者のセレクションバイアスに伴う集団代表性の問題、個人因子のみが評価項目で環境因子が見過ごされていること、など一定の限界を持つが、研究アプローチとしては十分に示唆的で、近傍研究の発展と将来的な政策提言への活用も期待できる。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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