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輸血用血液製剤の品質評価を自動化するAIシステム

毎年、主として寄付によって収集される輸血用の血液は1.2億ユニットにも及ぶが、血液は体外において継続的な劣化を避けられない。多くの国々では、およそ42日目までに血液製剤のほとんどが使用できなくなってしまう。血液製剤の質的評価は、専門家の目による顕微鏡検査のもと、複雑で主観的なアプローチが長く取られてきたが、これをAIによって自動化する取り組みが進んでいる。

Medical Xpressでは、米国科学アカデミー紀要にて公表された同研究論文を紹介している。米国・カナダ・スイス・ドイツ・英国の5カ国における12の研究機関が共同し、AIと先端イメージングの融合によって価値ある研究成果を導いた。研究は2段階のステップで構成されており、1つ目は人間の専門家と同じように、血液製剤における細胞分解を視覚的に6つのカテゴリに分類するというもので、ニューラルネットワークは40,000枚を超える画像データベースでの学習から77%の識別精度を持つに至った。

2つ目は、さらにその精度を向上させるため、6つの視覚的カテゴリへの分類を学習させるのではなく、ラベルの無い100万枚を超える画像データベースから自律学習を促した。最終的に深層学習アルゴリズムは、正常細胞から異常細胞に至る血球機能の劣化プロセスを正しく識別したという。研究を率いた、ハーバード大学の計算生物学者・Anne Carpenter氏は「AIは人間が認識しない微細な細胞変化を捉えることができる」とし、輸血用血液製剤の品質評価にAI利用が有効となることを強調する。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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