米コーネル大学が率いる共同研究チームは、標準的な電子信号を利用し、厚さ5ミクロン・長さ40-70ミクロン程度の極小ロボットを「歩かせる」ことに成功した。研究者たちは、極小ロボットの群れに生体内における組織間や血液中を自由に行き来させ、血管縫合を行わせるなどといった、医療分野における発展も視野に入れる。
コーネル大学による26日付ニュースリリースによると、ロボットはシリコン太陽電池と4つの電動アクチュエータから構成されるシンプルなものだという。研究の新規性は「極小の脚を作成したこと」にあるとしており、研究チームは厚さがわずか数十原子のプラチナストリップから脚を作成し、片面を不活性チタンの薄層で覆った。プラチナに正の電荷を加えると、負に帯電したイオンが露出面に吸着し電荷を中和するが、これらのイオンが「露出したプラチナを強制的に膨張させる」ことでストリップを屈曲させる仕組みとなっている。四肢の動きを制御するため、研究チームはストリップの上に硬質ポリマーパネルをパターン化して配列し、パネル間の隙間によって膝や足首と同等の関節機能を再現した。
ロボットは低電圧(200ミリボルト)・低電力(10ナノワット)で駆動するため、群での活動も特殊環境を必要としない。また、たった4インチ四方のシリコンウェハーが100万体相当のロボット素材となるほか、その製造プロセスは標準的なリソグラフィーに基づくため、大量生産にも困難がない。体表からロボット群を注入し、病巣部を直接治療する日が現実のものとなるのかもしれない。
なお、本研究成果はNatureにて26日公開されている。