医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例AIモデルで胸部X線画像から12年間の肺がんリスクを評価

AIモデルで胸部X線画像から12年間の肺がんリスクを評価

胸部CTによる肺がん検診の有用性が示されてきている。しかし米国メディケア等による医療制度下では、肺がん検診CTの対象者を有効に選別できておらず、検診への参加率は5%未満との推定もある。メディケアの肺がん検診CTの適格基準を上回る予測性能を示す畳み込みニューラルネットワークが開発され、学術誌 Annals of Internal Medicineに発表されている。

MedicalXpressでは、マサチューセッツ総合病院の研究者らによる「胸部X線検査を含む電子カルテからのデータによって、長期的な肺がん罹患を予測する畳み込みニューラルネットワーク(CXR-LC)」の研究開発成果を紹介している。12年追跡された胸部X線による肺がんスクリーニングの大規模多施設試験(PLCO)のデータを用いてアルゴリズムは開発された。喫煙者を追跡したPLCOとNLSTのデータセットで検証した結果、開発されたCXR-LCは肺がん発生の識別において、AUC0.755でメディケアの肺がんスクリーニング基準のAUC0.634を上回る予測性能を記録した。またCXR-LCは同比較において肺がん発生の見逃しが30.7%少なかった。

限られたデータセットによる検証という研究の限界はある一方、同研究では12年間という長期間の肺がん発症リスクを、現在の基準よりも正確に評価できる可能性が示された。またこれによって、CTによる検診で恩恵を受けられる「肺がん高リスクの喫煙者」をより適切に選別できるようになることが期待されている。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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