医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例網膜画像から体組成や腎機能を定量するAI研究 - 韓国「Medi Whale」

網膜画像から体組成や腎機能を定量するAI研究 – 韓国「Medi Whale」

網膜は微小な血管や神経組織を、体外から非侵襲的に直接覗き込める臓器として、様々な疾患の前兆あるいは進行を可視化できる。網膜のスキャンから神経変性疾患を検出するAI技術の一例を以前にも紹介した(過去記事)。韓国のスタートアップ Medi Whaleは、網膜の血管をスキャンすることで、年齢や身長・体重といった体組成の指標、さらには腎機能を反映する血中クレアチニン値を予測して定量するといった、全身のバイオマーカーとして利用するAIアルゴリズムを開発している。

Medi Whaleの研究成果は、学術誌 Lancet Digital Healthの10月号に収載され、オンライン版が公開されている。血液などの生体サンプルを利用せず、網膜画像単独のディープラーニングによって47種の全身バイオマーカーを予測するアルゴリズムがVGG16ベースで開発され、そのパフォーマンスが評価されている。47項目の中でも特に高い予測力を発揮して応用の可能性が示されたのは、体組成指標(筋肉量・身長・体重)とクレアチニン値であった(決定係数R-square値で評価)。

網膜画像データは韓国・北京・シンガポール・英国から23万枚あまりが使用され、民族や人種的な背景によって予測力がバラつくなどの課題がある。しかし、全身の評価を網膜から行うことは、非侵襲的な観察が可能な臓器という利点が活かされたもので、今後のさらなる可能性が示されたユニークな技術開発成果と言える。研究グループは、健康診断を含めた臨床への技術応用を見据えて、研究の発展と評価を進めている。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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