米イリノイ大学シカゴ校の研究チームは、メンタルヘルスケアへのアクセスを拡大・向上するため、AIドリブンな仮想エージェントをテストしている。米国立精神衛生研究所(NIMH)によると、メンタルヘルス不調は米国内だけで年間数千万人に影響を与えており、そのうちの半数は適切な治療にたどり着いていないとする。背景には、臨床医の不足・過度に細分化されたケア・社会的な偏見などがある。
同大学のJun Ma教授が率いる研究チームは、Lumenと呼ばれるAIドリブンな仮想エージェントにより、認知行動療法の一技法である問題解決療法(problem-solving therapy)を提供しようとしている。NIMHから5年間・200万ドルの助成金によって施行される本研究では、仮想エージェントによる治療介入の効果と安全性を評価し、実証後はAlexaへの実装と市民への一般提供までを考慮している。
Health IT Analyticsの取材に対し、Jun Ma教授は「研究の目的は、実績のある心理療法を利用できない多くの人々に対処することだ」とした上で、「本番環境への導入が始まれば、あっという間に誰でもプログラムにアクセスできるようになるが、現時点で研究は初期段階にあり、実現までには数年単位を必要とするだろう」と慎重な姿勢を明らかにする。研究チームは現在、小規模なユーザーテストを続けており、このフェーズに問題がなければランダム化比較試験(RCT)に移行することを見込んでいる。