世界保健機構(WHO)によれば、全世界で約2.8億人がうつ病に罹患しているという。抗うつ薬の治療効果が全ての患者には及ばないという課題が残る一方で、米リーハイ大学の研究チームは、機械学習技術を利用して脳内バイオマーカーを確立し、より個別化されたうつ病治療の道を拓こうとしている。
この研究は、米国立精神衛生研究所(NIMH)から大規模な助成金を獲得して行われている。チームは、患者のfMRI画像データと脳波を抗うつ薬治療前後で収集し、二重盲験無作為化比較試験を通じて得たデータから、薬物治療の効果を客観的に評価するためのバイオマーカーを特定しようとしている。この手法により、それぞれの患者がどの程度抗うつ薬に反応するか、あるいは反応しないかを予測できる可能性がある。特に同研究では、認知ワーキングメモリと感情制御に関連する脳内ネットワークの相互作用に焦点を当て、ここから新たなバイオマーカーを検出しようとしている。
AIが提示するこれらのバイオマーカーは、現在の試行錯誤的なうつ病の治療戦略を置き換える可能性を秘めており、それぞれの患者に対して個別化された治療アプローチを提供することが期待されている。研究を率いるリーハイ大学のYu Zhang氏は「従来のうつ病診断と治療は、主観的な症状を組み合わせてきたが、患者ごとにバラつきは大きい。我々が目指すのは、脳の機能障害をより適確に捉える客観的なバイオマーカーを構築することだ。本研究により、メンタルヘルスの状態は再定義され、大きなブレークスルーがもたらされるだろう」と語っている。
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