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うつ病自己管理にAIチャットボットは有効か?

AIチャットボットを含む会話型エージェント(CA: Conversational agent)は、うつ・不安などメンタルヘルスへの利用が増加し、その有用性が確認されつつある。シンガポール・南洋理工大学(NTU)の研究チームは、主要アプリストアでリリース済みの9種のCAを分析し、うつ病自己管理に関する効果を評価した。

Journal of Affective Disordersに発表された同研究では、9種のCA(無料4種:Marvin、Serenity、Woebot、7 Cups)(無料5種:Happify、InnerHour、Wooper、Wysa、Tomo)を対象に応答の質とその効果を評価し、個別最適化、うつ病自己管理への適切性、ユーザーへの共感性など8つのカテゴリーについて調査した。その結果、評価対象全てのCAが匿名性を保ち、共感的かつ非審判的(相手を断罪しない)会話が可能で、対面式心理療法が有する科学的エビデンスと一致する機能を提供していた。一方、どのCAも「個人的なアドバイス」は十分には提供できていないとする。そのため現在市場にあるCAでは、自殺願望や自傷行為の報告についてCAに依存しないよう注意する必要があり、包括的な自殺リスクの評価と管理にはまだ適さない面があると考察している。

著者らは「ユーザーの匿名性侵害を避けるため、CAは個人的な質問を十分には行わず、個別化されたアドバイスを提供できていない可能性」を指摘する。一方でCAは、医療支援を受けられていない人々にとって有用な代替手段となり得るほか、人によっては、人間よりも機械に話す方が気楽な場合もある点を潜在的有用性として強調している。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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