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カプセル内視鏡検査のディープラーニング解析

クローン病は原因不明の炎症性腸疾患で、我が国では指定難病に相当する。口から肛門に至るまで、全消化管に潰瘍などの病変が起こり、症状の寛解と再燃を繰り返すことが特徴となる。Therapeutic Advances in Gastroenterologyにこのほど掲載された研究では、新たにこのクローン病と診断された患者に対して施行したカプセル内視鏡(CE)動画に基づき、ディープラーニングモデルによって生物学的製剤の必要性を予測できる可能性が示されている。

CEはカプセル型の内視鏡で、内服薬のように水と一緒に飲み込むことで行う検査。CEは消化管の動きに沿って移動しながら、消化管内を撮影・記録することができる非侵襲的検査となる。研究論文によると、Intelやテルアビブ大学などの研究チームは、診断から6ヶ月以内にCEを受けたクローン病患者101人の動画データを利用し、生物学的製剤の必要性を予測するディープラーニングモデルを構築した。このモデルはAUC 0.86を示し、治療法の決定において有効な意思決定支援を行える可能性を示唆している。

研究チームは「新たにクローン病と診断された患者のCE画像をDLベースで解析することは、どの患者に生物学的治療が必要かを判断する正確な予測法として役立つ」と結論付け、今後の追加検証を進める旨を明らかにしている。

参照論文:

Spatiotemporal analysis of small bowel capsule endoscopy videos for outcomes prediction in Crohn’s disease

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