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イリノイ大学シカゴ校 – AIによるメンタルヘルスケアへのアクセス向上

米イリノイ大学シカゴ校の研究チームは、メンタルヘルスケアへのアクセスを拡大・向上するため、AIドリブンな仮想エージェントをテストしている。米国立精神衛生研究所(NIMH)によると、メンタルヘルス不調は米国内だけで年間数千万人に影響を与えており、そのうちの半数は適切な治療にたどり着いていないとする。背景には、臨床医の不足・過度に細分化されたケア・社会的な偏見などがある。

同大学のJun Ma教授が率いる研究チームは、Lumenと呼ばれるAIドリブンな仮想エージェントにより、認知行動療法の一技法である問題解決療法(problem-solving therapy)を提供しようとしている。NIMHから5年間・200万ドルの助成金によって施行される本研究では、仮想エージェントによる治療介入の効果と安全性を評価し、実証後はAlexaへの実装と市民への一般提供までを考慮している。

Health IT Analyticsの取材に対し、Jun Ma教授は「研究の目的は、実績のある心理療法を利用できない多くの人々に対処することだ」とした上で、「本番環境への導入が始まれば、あっという間に誰でもプログラムにアクセスできるようになるが、現時点で研究は初期段階にあり、実現までには数年単位を必要とするだろう」と慎重な姿勢を明らかにする。研究チームは現在、小規模なユーザーテストを続けており、このフェーズに問題がなければランダム化比較試験(RCT)に移行することを見込んでいる。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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