「Preventable Death」は患者の死因を分析した結果、治療介入次第では「防ぐ事ができたかもしれない死亡」を示し、救急医学領域でも頻出の概念である。防ぎえた死亡を検討するために、「診療記録から病院到着前の治療内容を自然言語処理で抽出するアルゴリズム」が、米国外科医学会臨床会議2020で発表されている(抄録集参照)。
同学会のプレスリリースによると、ミネソタ大学の研究者らが発表したアルゴリズムは、ミネソタ州の救急医療サービス(EMS)で搬送された自動車事故患者22,529名の診療記録を読み取り治療内容を抽出した。同研究の分析結果として、気道確保を要する患者で病院到着前に処置を受けたのは約4分の1(936名のうち242名)、骨髄穿刺で急速輸液するintraosseous accessが必要な患者では約3分の2(170名のうち110名)が処置を受けるにとどまることなどを明らかにした。同アルゴリズムは、2人の外傷外科医が手動でレビューした結果と比較され、80%以上の精度と再現性が達成されたという。
救急隊員らによって電子カルテに記録された内容は、適切な治療を受けられていたか後ほど精査されることになる。その検証過程は多大な労力を要するため、現場からは作業の自動化が待望されていた。同研究を率いたSwann博士は「医師の手を完全に離れて判断できる精度ではありませんが、従来の手動の精査過程を合理化するには十分なパフォーマンスを発揮できているでしょう」と語っている。