尿路結石は、激烈な痛みだけでなく、腎機能障害や尿路感染の原因にもなり、再発率の高さが課題となる。国内外のガイドラインでは「1日の尿量が2000-2500ml以上となる水分摂取」が結石の再発予防に対して推奨されている。しかし、その推奨に対して飲水目標の達成は難しく、遵守できる患者の割合は50%を下回るという。尿路結石を予防するため、飲水行動を促すウェアラブル技術が注目されている。
ペンシルバニア州立大学のニュースリリースでは、同大の研究チームが開発する飲水行動促進のウェアラブル技術「sipIT」が助成金約300万ドルを受け取ったことを報じている。sipITはスマートウォッチ Fitbitにインストールされ、無線接続されるインテリジェント水筒のH2O-Palと連動して、飲水量を追跡することで目標の飲水量達成を促す。患者がリマインダーを煩わしく感じない時間帯などアルゴリズムが工夫され、一定期間利用した後は、ツールなしでも水分摂取の習慣が継続されることを目指している。
同プロジェクトは、米国泌尿器科学会 American Urological Association(AUA)の2020年次総会でベストポスター賞を受賞して評判を高めた。今回の助成金提供を受け、大規模臨床試験に向けた技術改良が進められている。尿路結石のみならず、尿路感染症や術後再入院の予防など脱水症に関連するリスク管理への応用も期待される。積極的な飲水を促すシンプルな介入でありながら、その行動変容から生み出される健康上のメリットには大きな可能性を感じさせる。今後の展開が楽しみなプロジェクトである。