医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例がん精密医療に最適な薬剤を予測 - 米カリフォルニア大学サンディエゴ校「DrugCell」

がん精密医療に最適な薬剤を予測 – 米カリフォルニア大学サンディエゴ校「DrugCell」

開発中のがん治療薬のうち、米FDAの最終承認を獲得できるのはわずか4%と言われている。腫瘍細胞の複雑さに対し、どの薬剤が最適な働きをするか、完全な予測はいまだに難しい。そのような課題に対し、学術誌 Cancer Cellに「ヒトがん細胞にディープラーニングモデルを用いた薬剤反応と相乗効果の予測」が10月20日付で発表されている。

カリフォルニア大学サンディエゴ校のニュースリリースでは、同大を中心としたグループによって開発されたそのAIシステムを紹介している。システムは「DrugCell」と呼ばれ、1,235のがん細胞株に対する684種類の薬剤反応を学習している。システムへ腫瘍に関するデータを入力することで、薬剤に対する腫瘍の反応を制御している生物学的な代謝経路と、最適な薬剤の組み合わせを提示してくれるという。

同大では、患者から採取された腫瘍の生検サンプルから遺伝子配列を調べ評価する、Molecular Tumor Board(分子腫瘍委員会)が機能している。いわばDrugCellはその委員会をシミュレートしているようなものと言える。DrugCellの導いた結果の一部は実験室レベルで検証されており、今後は実際の臨床でテストしていくことをグループでは計画している。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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