脳卒中の診断にMRIスキャンは有用だが、極めて高額な検査で機器設置の制約もある。また、臨床診断手法のCincinnati Pre-hospital Stroke Scale (CPSS) やFace Arm Speech Test (FAST)は、医師の専門性に依存する。脳卒中を診療する誰もが利用できるスマートフォン動画ベースのAI診断ツールが、ペンシルベニア州立大学で開発されている。
ペンシルベニア州立大学のニュースリリースによると、研究グループは脳卒中患者80人以上に発語テストを行い、顔面の運動解析と自然言語処理によって、頬の下垂や言葉の不規則性など、脳卒中に特徴的な異常パターンを検出する機械学習モデルを構築した。テストに必要な動画データはスマートフォンで取得され、最短4分で評価可能という。同モデルが達成した79%の精度は、画像検査などを追加する前の医師の初期診断精度に匹敵すると開発者らは考察する。
研究成果は国際学術会議 Medical Image Computing and Computer Assisted Intervention(MICCAI)2020で発表された。診断の遅れにつながりがちな軽度から中等度の大多数の脳卒中に対し、「発症初期にのみ有効な治療選択肢を残す助け」となることがツールの発展で期待される。開発者らは、病院到着前の患者による自己評価や介護者による評価にもアプリが活用されることを将来的な目標としている。