医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例脳卒中の迅速診断をスマホ動画で行うAI研究

脳卒中の迅速診断をスマホ動画で行うAI研究

脳卒中の診断にMRIスキャンは有用だが、極めて高額な検査で機器設置の制約もある。また、臨床診断手法のCincinnati Pre-hospital Stroke Scale (CPSS) やFace Arm Speech Test (FAST)は、医師の専門性に依存する。脳卒中を診療する誰もが利用できるスマートフォン動画ベースのAI診断ツールが、ペンシルベニア州立大学で開発されている。

ペンシルベニア州立大学のニュースリリースによると、研究グループは脳卒中患者80人以上に発語テストを行い、顔面の運動解析と自然言語処理によって、頬の下垂や言葉の不規則性など、脳卒中に特徴的な異常パターンを検出する機械学習モデルを構築した。テストに必要な動画データはスマートフォンで取得され、最短4分で評価可能という。同モデルが達成した79%の精度は、画像検査などを追加する前の医師の初期診断精度に匹敵すると開発者らは考察する。

研究成果は国際学術会議 Medical Image Computing and Computer Assisted Intervention(MICCAI)2020で発表された。診断の遅れにつながりがちな軽度から中等度の大多数の脳卒中に対し、「発症初期にのみ有効な治療選択肢を残す助け」となることがツールの発展で期待される。開発者らは、病院到着前の患者による自己評価や介護者による評価にもアプリが活用されることを将来的な目標としている。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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