医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例パキスタンでの検証的研究 - スマホAIアプリによる小児予防接種率の改善効果

パキスタンでの検証的研究 – スマホAIアプリによる小児予防接種率の改善効果

パキスタンは小児定期予防接種(Routine Childhood Immunization: RCI)の接種率が極めて低い国のひとつに挙げられ、多くの健康問題につながっている。低中所得国(LMICs)に属する同国では、ワクチンに対する意識の欠如や誤った情報、親のスケジュール忘れなどの問題構造に対して、革新的で費用対効果の高い対策が望まれている。先進国の公衆衛生プログラムでは、RCI接種率の改善にモバイルアプリやSNSが効果的と示されてきた。一方、パキスタンのようなLMICsにおいても同様の介入プログラムが有効か、検証が必要とされている。

JMIR Research Protocolsには「AIベースのスマートフォンアプリによるパキスタンの小児予防接種率改善効果」について、現在進行中の研究プロトコルが紹介されている。モバイルアプリによってRCIに関するテキスト・音声・ビデオ・写真のメッセージが親たちには提供され、予防接種のスケジュールが通知される。それらの介入によって生後10週目と14週目のRCI接種率が改善されるか検証される。パキスタンの携帯電話加入者数は2020年5月時点で1億6600万人、同国でスマートフォンユーザーの95%が利用するAndroidプラットフォーム上でアプリは開発されている。

同研究のプレトライアルは2020年2月に実施され、現在はランダム化比較試験の参加者登録が進行中である。COVID-19のパンデミックと隔離施策によって、LMICsのRCI接種率はさらに悪化したといわれている。同研究から導き出される成果はパキスタンの子どもたちの未来だけでなく、同じような課題を抱える諸国でも重要な役割を果たすだろう。

TOKYO analytica
TOKYO analyticahttps://tokyoanalytica.com/
TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
RELATED ARTICLES

最新記事

注目の記事