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「薬物過剰摂取による死亡」の正確な時空間マッピング

特に米国における注射薬物使用者(PWID)は、HIVやB型・C型肝炎ウイルスへの感染、薬物過剰摂取による死亡(ODD)など、多大な健康リスクを抱えている。このPWIDコミュニティの時空間識別は、薬物使用に伴う死亡を低減するための公衆衛生学的介入プログラムの策定に欠かせない。米疾病予防管理センター(CDC)などの研究チームは、このPWIDとODDを正確に捕捉する機械学習モデルを開発した。

査読つきオープンアクセスジャーナルであるPLoS Oneに7日掲載されたチームの研究論文によると、Dynamic Overdose Vulnerability Estimator(DOVE)と呼ばれるこの新しいモデルでは、Googleのウェブ検索ボリュームを活用し、米国内におけるODDの評価と時空間マッピングを達成しているという。2004年から2017年の間に報告されたODD率と薬物関連の用語検索に強い関連性があることを確認した研究チームは、機械学習モデル(Extremely Random Forest)を用い、検索傾向から州および郡レベルでのODD推定に取り組んできた。DOVEは2017年に報告された70,237のODDに対して66,463と、実に94.48%の推定に成功している。

DOVEによるODDの時空間マッピングは、PWID間における潜在的な死亡傾向をタイムリーに特定できるもので、最も脆弱なコミュニティに対する効果的な介入政策の立案を後押しする。米国における社会問題の是正に、AIアプローチが活用された好例と言える。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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