Amazon Web Services(AWS)は先週、ヘルスケアデータの構造化分析をサポートするHIPAA準拠サービス「Amazon HealthLake」を公表した。臨床現場においては、カルテ記録・医療画像・各種検査結果・保険請求など、多面的な患者データが日々大量に蓄積・更新されているが、これらが適切に構造化されているケースは稀であるために、データ間の関連とそこから抽出される臨床知見導出はこれまで遅々として進まなかった。
AWSの公表によると、Amazon HealthLakeでは種々の患者データを一元化されたデータレイクに収集し、機械学習技術によるデータの自動標準化を実現しているという。サービス内では、タグ付けやインデックスおよびクエリの作成を通して横断的な情報検索環境を構築するとともに、個別化医療に向けた強力なデータ分析を可能とする。また、ペタバイト規模に及ぶ大規模データであっても、これまで数週間以上を要した処理時間を数分に短縮できる事実とその安全性を強調している。
一部の医療機関においては、非構造化データの変換と臨床情報のタグ付けプロセスを自動化するルールベースのツールを構築しているが、データを異種システム間で正規化する必要があるため、効果的な運用には障壁が大きかった。また、適切な構造化に成功しているケースであっても、データ間の関連推定と知見導出のためには解析アプリケーションを独自開発しなければならないことから、プロセス自体の複雑さと必要コストのために、各機関が保有するビッグデータは「鍵の無い金庫に保管される金塊」でしかなかった現実がある。AWSの新しいサービスローンチが、日常臨床の質を劇的に変化させるターニングポイントとなる可能性もある。