妊娠中にはじめて発見される糖の代謝異常に「妊娠糖尿病」があり、最大で15%の妊婦に影響する最も一般的な合併症のひとつである。妊娠糖尿病は死産や早産のリスクと関連することから早期発見と介入が望ましいが、妊娠の後期まで発見されない例も少なくないとされる。妊娠早期での発症予測を実現するため、中国の上海交通大学医学院と国際和平婦幼保健院の研究グループから「機械学習による中国人集団での妊娠糖尿病の早期予測」が発表されている。
学術誌 Journal of Clinical Endocrinology & Metabolismに収載された同研究では、妊娠第1三半期(13週までの妊娠初期)に妊娠糖尿病を予測するため、中国国内の病院における約1.7万件の電子カルテデータから機械学習モデルが開発された。73の変数を用いたモデルにおいてAUC = 0.80、費用対効果の高い7変数モデルでもAUC = 0.77という識別能力が達成されている。また、同研究内から妊婦の低BMI(17未満)が妊娠糖尿病のリスク増加に関連することと、甲状腺ホルモンの検査項目で「TT3とTT4」が「FT3とFT4」よりも優位な予測因子と示された。さらには動脈硬化の危険因子として知られる検査マーカー「リポ蛋白(a)」が妊娠糖尿病の有望な予測指標となる可能性も示唆された。
妊娠初期に妊娠糖尿病のリスクが高い女性を識別することで、早期に食餌療法などの介入開始が可能となる。そして、このようなAI技術の研究が進むことで、妊娠糖尿病の危険因子に対する理解がさらに深まると期待される。