米国立衛生研究所(NIH)は保健福祉省公衆衛生局の管轄下にあり、同国における医学研究をリードする重要拠点である。NIHはCOVID-19の拡大を極めて深刻な危機として捉えており、差し迫る医療崩壊の回避を念頭に、将来的な新規感染症のパンデミックにも技術的に備えることと併せ、COVID-19関連のAI研究・開発に対して大規模な助成を進めている。
Rapid Acceleration of Diagnostics(RADx)と名付けられたNIHの枠組みにおいては、「ウイルスの新規検査法、特に在宅検査手法の開発」(予算5億ドル)や「COVID-19の罹患率と死亡率における格差およびその要因に関する研究」(予算5億ドル)などに並び、 RADx-radというサブカテゴリ内で、COVID-19のスクリーニングや診断、重症度予測のためのAIシステム開発に対しても2億ドルの助成金を割り当てている。現在もRADx-radでは、対象となる研究課題の応募を受け付けており、技術力と発想の集結を通した困難の打開を呼びかける。
NIHは本年9月、COVID-19関連のビッグデータ解析プロジェクトについて、計7つの企業および学術機関に研究資金を提供したほか、NIHのブランチであるNIBIBを通してCOVID-19の画像診断AIツールの構築を目指すプロジェクトを立ち上げるなど(過去記事)、AIを含むデータサイエンス領域を技術の柱として重視する姿勢を崩さない。未曾有の危機に対して革新的成果を示せるか、今回の枠組みに対する視線も熱い。