Biological Psychiatry: Cognitive Neuroscience and Neuroimagingに掲載された研究論文によると、外傷性脳損傷後の心的外傷後ストレス障害(PTSD)発症リスクを高める「脳バイオマーカー」を特定した。
カリフォルニア大学サンディエゴ校などの研究チームは、400名以上の外傷性脳損傷患者を追跡し、受傷後3ヶ月と6ヶ月でフォローアップの評価を加えたという。3ヶ月時点では77名、6ヶ月時点ではさらに70名の患者にPTSDを認めており、初期のMRI画像からPTSD発症リスクと関連する因子を探索した。結果、帯状皮質や上前頭皮質、島の各領域に体積の縮小を認めることが、その後のPTSD発症を有意に予想していることを明らかにした。
脳容積を外傷性脳損傷後のPTSD発症におけるバイオマーカーとして取り扱うのは新しい視点であるが、現時点では臨床ガイドラインを変更するほどにロバストな研究成果ではない。一方、昨年10月にはボストン大学の研究チームが機械学習アプローチを用い、PTSD診断に利用される20個の質問項目のうち6項目を削除することに成功しており(参照論文)、本研究成果もPTSD診断強化を目指したこの取り組みに統合されることが予定されている。