米ニューヨーク市マンハッタンに所在するマウントサイナイ医科大学の研究チームは、アルツハイマー病における3つの分子サブタイプを特定した。これは個別化された治療法開発に向けた新しい道を切り開く可能性があることから、研究成果は現在大きな注目を集めている。チームの論文は先週、Science Advancesから公開された。
マウントサイナイ医科大学によるプレスリリースによると、アルツハイマー病患者および非アルツハイマー病患者であった数百名の死亡献体から、5つの脳領域1,500を超えるサンプルを取得し、RNAシーケンスデータを解析することでこの成果を導いたという。特定された3つのサブタイプは年齢や病期とは完全に無関係で、脳の変性につながる生物学的機序に連動する。興味深いことに、アルツハイマー病の神経病理的学的特徴とされるタウ蛋白による神経原繊維変化やアミロイドβプラークは、特定のサブタイプのみで有意に増加するものであった。
近年多くの研究で、アルツハイマー病の原因として免疫反応の存在が示唆されている。一方で、アルツハイマー病の半数以上において正常脳と比較して「免疫反応の上昇を認めない」事実もあり、これはアルツハイマー病進行における特定サブタイプ固有の分子ドライバーの存在によって説明されようとしている。研究者らは「アルツハイマー病の分子サブタイプの特性評価によって、調節不全となっている多くの新しいシグナル伝達経路が明らかになるため、新しい治療ターゲットが見出されていく」ことを強調する。