医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例COVID-19患者を見守る彗星「CoMET」

COVID-19患者を見守る彗星「CoMET」

COVID-19の入院患者の健康状態を監視する方法として、大多数の病院ではアラームを使用している。ひっきりなしに鳴る古典的なアラームの9割は何もする必要がないという研究結果があり、いわゆる「アラーム疲労」問題は以前にも取り上げた(過去記事2020/02/14)(過去記事2019/08/16)。バージニア大学(UVA)の病院機関UVA Healthでは「CoMET」という12時間以内の重症化リスクを視覚的に把握できるソフトウェアを導入して、COVID-19患者のケアに挑戦している。

UVA Healthの25日付けニュースリリースでは「CoMET」を紹介している。ニュースのトップ画像のように、ディスプレイ内では循環器と呼吸器のリスクがX-Y軸として示され、安定している患者の小さな「彗星(comets)」状の輝点は軸のゼロ点近くに寄り添っている。しかし、リスクレベルが上昇した患者の彗星は大きさを増し、鮮やかなオレンジや深紅色に変化し、太い流れ星のように画面上を這い回ることで状態の不安定さを明示する。2秒ごとのパラメータ変化と15分ごとのモデル更新で、AIによる精密なリスク予測がカラフルなグラフィックで示される。この「CoMET」モニタリングシステムは、4時間や8時間間隔でリスクを報告するような旧来のシステムや、ほとんどが対応不要で鳴りっぱなしの古典的アラームとは異なる独自のアプローチとなっている。大胆なビジュアル表示は、臨床医のリスク評価と介入を強化し、看護師の自律した積極的なケア提供に寄与するという。

CoMETの生みの親であるUVAの循環器専門医Randall Moorman医師は、予測分析のパイオニアとして長く活躍してきた。20年前に彼のチームは、未熟児の敗血症を数時間前に警告するCoMETに似た視覚的リスク表示システム「HeRO」を開発していた。3,000人の低出生体重児を対象とした大規模無作為試験では「HeRO」によって死亡率を20%減少したことが明らかにされた。「CoMET」も今後2年間で、無作為にシステムが割り当てられた実験群と、システムを利用しない対照群との比較試験により、臨床的有効性が判断されるという。CoMETがCOVID-19との戦いにおいて、臨床のあり方を従来の反応的なものから積極的なものへ変えることを研究チームは期待している。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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