てんかん発作はニューロンの過剰な放電に基づく、「脳の電気的嵐」によって引き起こされる痙攣発作で、日本においても100万人近い患者の存在が指摘される。その発生機序から脳波データに基づく識別が主要な診断アプローチであったが、米ダートマス大学の研究チームは「脳波データ以外からてんかん発作を検出する手法」を探索している。
Computers in Biology and Medicineにオンライン公開されているチームの研究論文によると、脳以外の時系列データからてんかん発作を検出する手法を導くため、15名の患者から網羅的な客観データの収集を行っている。取得されたのは標準的な脳波記録のほか、心電図や皮膚電気活動、筋電図、加速度計、音声記録などで、線形判別分析(LDA)を用いた解析によって発作データを非発作データから分離できる可能性を検討した。結果ではAUC 0.9682と高精度な識別を実現しており、発作の検出に最も大きく寄与する非脳因子は患者ごとに異なる事実も明らかにした。
研究チームは、種々のセンサー導入によるマルチモーダルアプローチが、感度・特異度を保った上での発作検出に有用であると結論付けている。また、「てんかん発作の識別に寄与する各センサーと機能を定量評価する手段を示すもの」としても本研究の重要性を強調している。