医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例自傷・精神病型イベント・依存症の発症を予測するAIモデル

自傷・精神病型イベント・依存症の発症を予測するAIモデル

「behavioral health」という概念は、精神症状・自傷行為・依存症など精神科および心理学の健康管理を幅広く含むもので、米国を中心に近年提唱されるようになってきた。一部の問題行動を予測することは困難とされてきたが、AIモデルによって予測精度を高める機運がある。

米サウスダコタ州拠点の医療グループ Sanford Healthの8日付ニュースリリースによると、同グループで開発されたAIモデルは3つのbehavioral health領域における問題行動、すなわち「自傷行為・精神病型イベント・化学物質依存症」の発症を予測するものである。そのモデルは「Predicting Health Outcome in a Behavioral Health Outpatient Setting(PHOBOS)」と呼称されている。PHOBOSは医療記録にもとづき、3つの健康問題について患者が今後1年以内に1つ以上の状態に陥る可能性をパーセント表示し、医療者に通知できる。

開発者らはPHOBOSのようなAIツールがもたらす以下の利点を提唱している。①behavioral healthの専門医療サービスへ患者のアクセスを優先させる、②プライマリケア医への通知でメンタルヘルスに焦点を当てさせる、③ケアによる状態改善がスコア改善として反映される可能性、の3つだ。また、開発者らはCOVID-19が精神衛生上に与えた影響によって、2020年のデータがこのモデルに反映されたときどのようなものになるか興味深いとして、今後の開発について検討している。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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