慢性腎臓病(CKD: chronic kidney disease)は、腎機能の低下や異常が持続する状態を示す疾患群である。腎機能は加齢で低下して、高血圧や糖尿病の影響と相まって異常を示す。CKDは脳や心血管疾患のリスクとしても知られ、英国では国民の10人に1人がCKDの影響を受けていると試算されている。英国国民保健サービス(NHS)のテクノロジー部門を担うNHSXは、今後3年間で50万人へAIベースの在宅検査キットを提供してCKD初期患者のスクリーニングを支援する。
Med-Tech Innovation Newsの報道では、NHSXが在宅患者へ提供する検査キットはイスラエル拠点のHealthy.io社のものであり、すでに3,500人以上の患者が検査キットを受け取っているという。検査キットには尿に浸す検査スティックおよびHealthy.ioが特許取得済みのカラーボードが含まれ、ボード上に置いた検査スティックをスマートフォンのカメラでスキャンしてユーザーを検査へと導く。色調解析にAIを組み合わせることで検査ラボと同等の結果を得て、家庭医(GP)と結果が共有されることで異常な検査結果はフォローアップされる。
CKDが社会に与える影響に比し、その危険性を認識できている国民は少ないとされ、世界各国では疾患の啓蒙と早期発見への取り組みが続く。試算によると、Healthy.ioの技術を英国内に展開することで今後5年間で1.1万人の生命を救い、NHSにとって6.6億ポンド以上の予算削減に寄与する可能性があるという。特にCKDの進行で至る透析治療を回避することは大きなコスト削減効果が期待される。Healthy.ioは、2020年に米CB Insightsが選んだ世界の有望AIスタートアップ100としても注目が続いている(過去記事2020/03/06)。