医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例AI支援が変形性膝関節症の治療意思決定をより良いものにする

AI支援が変形性膝関節症の治療意思決定をより良いものにする

変形性関節症(OA: Osteoarthritis)は高齢化と相まって有病率が増加し医療費の増加要因とされている。膝のOAに関しては、治療選択肢が手術療法の他に減量・理学療法・関節内注射など多岐にわたるため、医療者と患者がエビデンス知識を共有して治療方針を決定するSDM: shared decision-makingが重視される。膝OAで人工膝関節置換術(TKR)を受ける患者の意思決定に「AIデータ解析で支援を受けることの有用性」についての研究がJAMA Network Openに発表されている。

米テキサス大学オースティン校の研究者らは、膝の痛みを訴える129名の患者において無作為化比較試験を行った。ここでは、AIによる分析を統合して治療意思を決定した69名の介入群と、通常の患者教育資料を用いて治療意思を決定した60名の対照群に割り付けた上で、TKRの手術療法に進んでいる。意思決定の質を評価する指標としてKnee OA Decision Quality Instrument(K-DQI)が用いられ、介入群の方が平均で20%良好な結果であった。SDMのレベルや満足度についても介入群が有意に上回り、診察時間やTKR実施率に影響を与えることはなかった。

膝OAの患者ごとに「パーソナライズされたAIデータ解析を治療意思決定の支援に用いることの有用性」が同研究では示されている。患者特有の身体的・感情的・社会的な側面まで網羅した治療意思決定は今後ますます重要なものとされ、AIによる支援の場はさらに増えていくだろう。

TOKYO analytica
TOKYO analyticahttps://tokyoanalytica.com/
TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
RELATED ARTICLES

最新記事

注目の記事