行動・興味関心・社会的コミュニケーションなどに障害をともなう「自閉スペクトラム症(ASD: Autism Spectrum Disorder)」の診断は、米国で少なくとも59人に1人の割合、診断時の平均年齢は4歳といわれる。ASDを抱える児童の早期診断のために、血液中のバイオマーカーを特定する研究が展開されており、テキサス大学サウスウェスタンメディカルセンター(UTSW)の研究者らは「機械学習アプローチでASD診断と強く相関する9種のタンパク質を特定した」ことを発表している。
オープンアクセスの査読付き科学ジャーナルであるPLOS Oneに発表された論文によると、154名の男児(ASD群76名・定型発達群78名)の血液から1,125種のタンパク質がバイオマーカーの候補として検証された。機械学習手法のランダムフォレストによって解析した結果、5種のコアとなるタンパク質(MAPK14・IgD・ DERM・ EPHB2・suPAR)と、それに追加することで予測精度をさらに向上させる4種のタンパク質(ROR1・GI24・elF-4H・ARSB)が特定された。また、それらタンパク質の発現レベルはASDの重症度とも相関していた。
同研究は男児のみの登録で性差の検証には至っていないという限界があり、特定されたバイオマーカーパネルの価値について大規模な検証研究が待たれる。UTSWのニュースリリースによると、同論文の著者のひとりで精神医学教授であるDwight German博士は「血中バイオマーカーを用いてASD児の発症リスクを早期に判定することができれば、子どもがコミュニケーションや学習を最適化するスキルを前もって身に付けられるよう、介入できるようになるでしょう」と語っている。以前紹介したAIによる自閉スペクトラム症のサブタイプ特定についても参照いただきたい(過去記事)。