手術技能の評価は、専門家の主観に大きく依存しており、評価を受ける機会やコストに課題があった。外科医の技術評価を自動化・客観化する試みとしてAIの応用が期待されている(過去記事)。スイスを代表する病院のひとつ、インセルスピタル(ベルン大学病院)では「3段構えの機械学習アルゴリズムで手術スキルを自動評価する研究」が行われている。
学術誌 Scientific Reportsに発表された同研究では、「腹腔鏡下の胆嚢摘出術におけるクリッピング操作」を技能評価に適した代表的手技として解析の対象とした。1段階目では手術動画から手術器具を特定するため、畳み込みニューラルネットワークによる学習を行った。2段階目では器具の動きを解析しパターンを抽出した。3段階目では器具の動きのパターンと専門家による評価との関連を、線形回帰によって調査した。同研究が捉えた手術技量の特徴として、熟練外科医は狭い範囲に集中して器具を動かしており、一方で未熟な外科医は器具が頻繁に方向転換し、広い範囲で遅く動き、震えを伴う傾向が確認された。結果として、同研究のアルゴリズムは手術技量の良し悪しを87%の精度で予測できたという。
研究グループは、今回の成果は手術支援システムの実現に向けた概念実証の第一歩と考えている。さらなる研究の発展により、術者の疲労を検知した際に警告を発して術中の合併症を予防できるような、エキスパートシステムへ発展していくことなどが期待されている。