医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例最新医療AI研究敵対的生成ネットワークによるアルツハイマー病識別パフォーマンスの強化

敵対的生成ネットワークによるアルツハイマー病識別パフォーマンスの強化

ゲーム理論に基づく深層学習技術に敵対的生成ネットワーク(GAN)がある。GANは生成モデルの一種で、データから特徴を学習することで実在しないデータの生成までを実現する。アーキテクチャの柔軟性から広範な応用研究がみられるが、医学領域では医用画像の高解像度化などに大きな可能性を示している(過去記事)。

米ボストン大学の研究チームは、MRI画像など既存データでの診断精度を高めるため、GANを用いた分類モデルの構築を進めている。Alzheimer’s Research & Therapyから14日公開されたチームの研究論文によると、151名の研究参加者から1.5テスラおよび3.0テスラのMRI画像を同時取得し、GANモデルの構築に利用したという。両MRI画像から学習したGANモデルは1.5テスラMRI単独に比べて、より高品質な診断用画像を生成していた。アルツハイマー病の識別には畳み込みニューラルネットワーク分類器を用い、他施設における検証データセットでは、このGAN生成画像による分類器は1.5テスラ画像単独から学習した分類器に比して、3%前後の有意な識別精度向上を確認している。

研究チームは「GANフレームワークによる画像品質改善は、アルツハイマー病の識別パフォーマンスを向上させる」としており、過去に1.5テスラMRIを利用した疾患コホートや、最新設備の導入が遅れる医療機関において特に、GANによる画像生成モデルが強力に機能することを指摘している。

TOKYO analytica
TOKYO analyticahttps://tokyoanalytica.com/
TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
RELATED ARTICLES

最新記事

注目の記事