ゲーム理論に基づく深層学習技術に敵対的生成ネットワーク(GAN)がある。GANは生成モデルの一種で、データから特徴を学習することで実在しないデータの生成までを実現する。アーキテクチャの柔軟性から広範な応用研究がみられるが、医学領域では医用画像の高解像度化などに大きな可能性を示している(過去記事)。
米ボストン大学の研究チームは、MRI画像など既存データでの診断精度を高めるため、GANを用いた分類モデルの構築を進めている。Alzheimer’s Research & Therapyから14日公開されたチームの研究論文によると、151名の研究参加者から1.5テスラおよび3.0テスラのMRI画像を同時取得し、GANモデルの構築に利用したという。両MRI画像から学習したGANモデルは1.5テスラMRI単独に比べて、より高品質な診断用画像を生成していた。アルツハイマー病の識別には畳み込みニューラルネットワーク分類器を用い、他施設における検証データセットでは、このGAN生成画像による分類器は1.5テスラ画像単独から学習した分類器に比して、3%前後の有意な識別精度向上を確認している。
研究チームは「GANフレームワークによる画像品質改善は、アルツハイマー病の識別パフォーマンスを向上させる」としており、過去に1.5テスラMRIを利用した疾患コホートや、最新設備の導入が遅れる医療機関において特に、GANによる画像生成モデルが強力に機能することを指摘している。