医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例幼児期の喘息診断は一過性か持続性か? - 機械学習モデルによる予測研究

幼児期の喘息診断は一過性か持続性か? – 機械学習モデルによる予測研究

5歳より前に小児喘息と診断されるような症例では、成長後に症状が治まるケースもしばしばみられ、以後も症状が持続する個人を特定することには難しさがあった。電子カルテ(EHR)データからのAI/機械学習アプローチで「幼児期の喘息が一過性か持続性かを予測する研究」が米ペンシルバニア州のフィラデルフィア小児病院が保有する大規模データをもとに行われた。

オープンアクセスの査読付き科学ジャーナル PLOS ONEに発表された同研究では、2-5歳で喘息の診断を受けた9,934名の子どものデータセットが用いられ、その後に喘息関連の診察を受けていない一過性診断と、5-10歳で引き続き喘息関連の診察を受けた持続性診断を区別するため、5つの機械学習モデルが訓練された。なかでもXGBoostを用いたモデルが最良の予測指標(評価指標ANSA: average NPV-Specificity areaの平均で0.43)を示した。同研究の結果から、喘息症状が持続することへの重要な特徴として、喘息に関連した受診回数の総数や初期診断の年齢、アレルギー性鼻炎、湿疹などが確認された。

研究グループは「小児喘息の早期診断によって不必要な治療が継続されたり、子どもと家族の生活の質が低下する可能性もある。小児科医と親にとって、小児喘息が慢性疾患として持続するか、一過性の診断の可能性があるのか、機械学習モデルによって個別に予見できるようになれば価値のあること」と主張している。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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