咳は病気の症状として重要で、含まれている医学的な情報は多岐にわたる。咳の情報に焦点をあて、音響疫学(acoustic epidemiology)という新たな分野を開拓し、咳のデータを収集・解析するAIプラットフォームを提供する「Hyfe」という企業がある。
Business Leaderには、HyfeのCEOであるJoe Brew氏のインタビューが掲載されている。同社は一般ユーザー向けに咳をトラッキングするスマホアプリ「Hyfe Cough Tracker」をApp StoreとGoogle Playで提供している。一方、研究者向けにはHyfe Researchというアプリと、Hyfe Screeningというウェブサイトを提供し、そこで研究に必要なデータセットを共有する。スマホアプリ上では、爆発的で短い突然の音のピークを検出し、ユーザーのプライバシー保護と通信帯域幅の節約目的から、0.5秒以下のピーク音のみを記録していく。サーバー上へ安全に送信されたデータは、機械学習モデルで、咳、くしゃみ、その他の音のように分類され、そこから疾患別の分類など下流のアルゴリズムが実行される(疾患分類モデルは現在未公開)。
現在、一般ユーザーが体験できるのは咳の頻度の数値化、いわゆる「Fitbitスタイル」で咳の回数や時系列をダッシュボードに載せ、咳の音声データ再生や、データを医師や友人と共有することである。Brew氏は「自身の咳の量を正確に把握している人はいない」として、まずはこの情報だけでも健康管理に役立つことを強調する。研究者向けにはデータ集計・分析の専用ダッシュボードが用意され、研究への活用例は無数にあると同氏は期待している。
Hyfe社の立ち上げと事業の加速にはCOVID-19のパンデミックが背景にあり、将来的には新興感染症アウトブレイクにおける初期段階の検出や、結核のパンデミック監視などでの利用も想定している。Brew氏は「洗練された最先端のテクノロジーがSNSのクリック率を高めている一方で、ヘルスケアのインターフェースがいまだに紙とペンのようなプロセスに頼っている事実を憂いてきた」と、Hyfeのアイデアを生んだ思いを語っている。
関連記事: