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造血幹細胞移植のレシピエントにおける「敗血症発生」を予測する機械学習モデル

造血幹細胞移植におけるレシピエントでは、複合的要因によって免疫不全状態となるため、あらゆる感染症リスクを伴う。なかでも、感染症に伴って深刻な臓器障害に至る敗血症は、罹患後の治療成績も決して良好ではないことから発生リスクの高精度な予測手段が求められてきた。米ワシントン大学の研究チームは、種々の臨床データから「造血幹細胞移植レシピエントにおける敗血症発生」を予測する機械学習モデルを開発している。

JAMA Network Openから19日公開されたチームの研究論文によると、2010年から2019年にかけて、ワシントン州シアトルのフレッドハッチンソンがん研究センターで施行された1,943名の移植データに基づき、この予測モデルは構築されたという。移植例のうち、実に1,594名に少なくとも一度の菌血症を認めた。全菌血症エピソード8,131のうち、238(2.9%)については敗血症が疑われるものであった。チームが開発した予測モデルはAUC 0.85を示し、既存ツールで最も高精度な予測を示したもの(AUC 0.64)に対して大幅な精度向上を実現している。

研究チームは「新しい機械学習モデルは既存ツールと比較して、敗血症リスクの高い菌血症推定および短期死亡のいずれについても優れた予測精度を持つ」ことを強調し、臨床現場におけるタイムリーな敗血症リスクの検出システムとして利用できる可能性を指摘している。

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