COVID-19に関する荒唐無稽な「陰謀論」がSNSによって発信・拡散されることは、公衆衛生上の大きな問題がある。米ロスアラモス国立研究所のグループによって、「SNS上でのCOVID-19陰謀論の進化を追跡するAI研究」が発表されている。
ロスアラモス国立研究所のニュースリリースでは、学術誌 Journal of Medical Internet Researchに発表された「4つの代表的なCOVID-19陰謀論をTwitterから解析する機械学習モデル」が紹介されている。その4つの陰謀論は、「5G電波塔がウイルスを拡散させた」「ビル&メリンダ・ゲイツ財団がCOVID-19を設計または何らかの悪意を持っている」「ウイルスはバイオエンジニアリングまたは実験室で開発された」「COVID-19ワクチンはまだ開発中の危険なものである」といったものである。同研究では2020年1月から5月までのCOVID-19関連ツイート1.2億件から180万件までフィルタリングし、そこからランダムフォレストによる機械学習モデルで上記4種の陰謀論ツイートを特定した。それらを分析したところ、ツイートは否定的な感情を多く含んでおり、陰謀論は時間の経過とともに進化し、無関係な陰謀論あるいは現実の出来事の詳細部分を取り込んでいくことが示された。
陰謀論に取り込まれた現実の一例として、ビル・ゲイツ氏が資金提供した「予防接種記録に使えるという注射可能なインクの開発研究」があった。その話題が2020年3月に紹介された直後から、人口管理のため、COVID-19ワクチンを密かにマイクロチップ的に利用している、といった反ワクチン陰謀論の単語が見られ始めたという。論文の筆頭著者であるShelley氏は「公衆衛生担当者にとって、事実に基づいた広報活動で陰謀論に対抗する手段を戦略的に考えるため、陰謀論がどのように進化し支持を得ているか知ることが重要となります」と語っている。