医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例大腸がん免疫染色から分子標的薬の効果を予測するAI研究

大腸がん免疫染色から分子標的薬の効果を予測するAI研究

英国では4月にBowel Cancer Awareness Month(腸管がん啓発月間)が展開されている。そこにタイムリーな発表のひとつとして、英リーズ大学から「進行性大腸がん患者の一部に存在するタンパク質を免疫染色標本からAIで解析して分子標的薬の効果を予測する」研究成果が公表された。

リーズ大学の22日付ニュースリリースでは、同大学のグループから学術誌 American Association for Cancer Researchに発表された研究を紹介している。研究内では、転移性大腸がん患者から採取された腫瘍組織に対して免疫染色を行い、染色された腫瘍細胞の割合を機械学習手法で算出し、細胞増殖に関わるタンパク質「アンフィレグリン(AREG)」と「エピレグリン(EREG)」の発現を定量評価した。それら患者へ化学療法としてイリノテカンを投与する際に、分子標的薬「パニツムマブ(商品名: ベクティビックス)」の併用群/非併用群に割り付けて治療効果を検討した。結果として、前述のタンパク質が高度に発現していた患者では、パニツムマブ併用により無増悪生存期間(PFS)が有意に改善したことを確認できた。

「免疫染色の評価に機械学習手法を導入することで、検査法がより実用的となり日常診療において利用が可能となる」と著者らは指摘する。AIによる解析で、病理標本からタンパク質の発現量を治療効果予測のバイオマーカーに用いるのはひとつのトレンドとなってきた。複雑化するがん治療および分子標的薬の選択基準として、今後さらに一般的となっていくAI応用であろう。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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