心臓突然死は欧州で全死亡の約20%を占め、今なお公衆衛生上の課題となっている。心臓突然死を防ぐ手段のひとつとして、植込み型除細動器(ICD: implantable cardioverter defibrillator)が装着される。従来基準によると、心筋梗塞後の患者で「左室駆出率(EF)35%以下」にICD植込みが推奨されている。しかし、実際にICDで救命できている患者は少数で、EFが35%より高く維持された患者でも心臓突然死の発生が問題となるため、心臓突然死リスクとICD適応を予測する新たなアプローチが待望されていた。
4月23~25日に欧州不整脈学会(EHRA: European Heart Rhythm Association)の2021年次総会が開催され、同学会のプレスリリースでは、ICD適応患者をAI利用で適切に選択するプロジェクト「PROFID」の概要発表を伝えている。PROFIDでは、心筋梗塞患者数十万人を対象とした合計23のデータベースにAI手法を組み合わせ、心臓突然死の個別リスクを示す予測モデルを作成している。そして3,900名以上の患者が参加する2つの臨床試験で新時代のICD治療戦略が検証される。「PROFID-Reduced」では、EF35%以下だが低リスクと予測された患者で、ICD装着/非装着が無作為割り付けされる。「PROFID-Preserved」では、EF35%以上だが高リスクと予測された患者でICD装着/非装着が振り分けられる。
主任研究員のNikolaos Dagres氏は「プロジェクトの目標は、ICD治療の意志決定方法を変え、必要な人にはICDを与え、不要な人にはICDを与えないようにすることです。倫理面・患者視点・医療経済への影響の検証もこの試験と並行します」と述べている。