AI医師が自分を覚えていてくれると特別感がある?

医師が名前や病歴を覚えていてくれると、患者は自身が特別な存在であると感じ、個別化されたケアを受けていると思うかもしれない。しかしそれがAIの医師であった場合はどうなるか。

ペンシルベニア州立大学カリフォルニア大学サンタバーバラ校のチームによって、「AI医師による患者の個別化がユーザーエクスペリエンスに与える効果」が研究されている。同研究は5月8日~13日まで横浜を主催地として開催されたオンライン学会「CHI(Computer-Human Interaction)2021」で発表された。研究の概要として、ヘルスケアチャットボットが患者を個別化した場合、患者はそのAIを押しつけがましいと考える傾向が強くなり、医療アドバイスを聞き入れる可能性が低くなることが示唆された。一方で、個人情報を覚えてくれていない人間の医師に対しては、他の患者と区別することを期待しており、アドバイスに従う可能性が低くなった。その他ユニークな結果として、チャットに人間の医師が登場する実験条件では、参加者の大部分(約78%)がAI医師と対話していると錯覚してしまった。

今回の研究成果は、「AI医師に患者の個別性を認識させることで、患者がAIを良く受け入れるのではないか」という戦略が裏目に出てしまう可能性を示している。そこには、患者がAIを医師として受け入れることに潜在的な抵抗を感じているひとつの裏付けがあり、AIが患者との良い関係を築くためのシステムおよびユーザーエクスペリエンスの設計の難しさとも言える。

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The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。

1. M.Okamoto MD, MPH, MSc, PhD
信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、ロンドン大学ユニバーシティカレッジ(University College London)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員を経て、SBI大学院大学客員准教授、東京大学特任研究員など。専門はメディカルデータサイエンス。

2. T.Sugino MD
防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。