自閉スペクトラム症(ASD)は人種・民族・社会的背景に関係なく、54人に1人程度の一定割合でみられる発達障害のひとつである。ASDの早期診断と介入は行動改善につながるが、そのプロセスは専門家がどれだけ長時間子どもたちに関われるかという現場の高負荷に依存している。
米テキサス大学サンアントニオ校(UTSA)の13日付ニュースリリースによると、ASD児の学習をサポートするためのパーソナルAIを構築する研究室「ABAiラボ」の設立を発表している。同ラボではMicrosoft社のヘッドギア・ビデオカメラ・各種ウエアラブルデバイスからASD児の四肢の動き、音声のトーン、心拍数などのデータを取得する。それらからASD児に特徴的な4つの次元の行動パターン「反復行動」「言語の遅れと混乱」「社会的相互作用の障害」「興味の範囲の制限」に沿って解析を行う。
UTSAの研究者らは、今夏までにまずはASD児の睡眠パターンと、それらが日中の行動をどう予測するかに焦点を当ててAIのテストを行う。同校の准教授Leslie Neely氏は「人間の観察者が子どもに同席しながら収集できるデータには限界があり、専門家らに大きな負荷となっています。AIがこの負荷を軽減してくれるでしょう。データ収集と評価から人を離脱させるのではなく、より重要な場面で人を使うことに注力させるのです」と語っている。ラボでの研究成果は、ASD児に介入するAR/VRやゲームといったデジタルプラットフォームへの利用も想定されている。
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