医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例自閉スペクトラム症の子どもにパーソナルAIを構築する研究室「ABAiラボ」

自閉スペクトラム症の子どもにパーソナルAIを構築する研究室「ABAiラボ」

自閉スペクトラム症(ASD)は人種・民族・社会的背景に関係なく、54人に1人程度の一定割合でみられる発達障害のひとつである。ASDの早期診断と介入は行動改善につながるが、そのプロセスは専門家がどれだけ長時間子どもたちに関われるかという現場の高負荷に依存している。

米テキサス大学サンアントニオ校(UTSA)の13日付ニュースリリースによると、ASD児の学習をサポートするためのパーソナルAIを構築する研究室「ABAiラボ」の設立を発表している。同ラボではMicrosoft社のヘッドギア・ビデオカメラ・各種ウエアラブルデバイスからASD児の四肢の動き、音声のトーン、心拍数などのデータを取得する。それらからASD児に特徴的な4つの次元の行動パターン「反復行動」「言語の遅れと混乱」「社会的相互作用の障害」「興味の範囲の制限」に沿って解析を行う。

UTSAの研究者らは、今夏までにまずはASD児の睡眠パターンと、それらが日中の行動をどう予測するかに焦点を当ててAIのテストを行う。同校の准教授Leslie Neely氏は「人間の観察者が子どもに同席しながら収集できるデータには限界があり、専門家らに大きな負荷となっています。AIがこの負荷を軽減してくれるでしょう。データ収集と評価から人を離脱させるのではなく、より重要な場面で人を使うことに注力させるのです」と語っている。ラボでの研究成果は、ASD児に介入するAR/VRやゲームといったデジタルプラットフォームへの利用も想定されている。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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