医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例処方ミスを防ぐAIモデルが台湾と米国の国境を越える

処方ミスを防ぐAIモデルが台湾と米国の国境を越える

台湾は世界でも有数の、中央集権的で構造化された電子カルテ(EHR)システムを持つ国である。そのため、電子カルテデータをもとにした医療AIの開発で競争力を発揮している。台湾と米国を拠点とするAIスタートアップ「Aesop Technology」は、連合学習(FL: Federated Learning)によって処方ミスを防ぐAIモデルを開発している。

Aesopの17日付プレスリリースによると、同社と台北医学大学およびハーバード大学医学大学院の共同研究から、「一般内科診療所での処方ミスを検出する機械学習モデルについて、連合学習による国際的な移転可能性を評価する」成果が学術誌 Journal of Medical Internet Research – Medical Informaticsに発表された。同研究では処方箋が診断名に適合しているか識別するモデルを構築する際に、台湾のローカルデータベースの処方箋13.4億件によるオリジナルモデル(O)、米国の処方箋データベース66万件によるローカルモデル(L)をそれぞれ構築し、国際間での連合学習によるハイブリッドモデル(H)の精度と比較した。その結果、Oモデルの精度75-78%、Lモデルの精度76-78%という良好な国際間の移転性を示し、Hモデルでは精度79-85%というさらなる精度向上を達成できた。

膨大かつ多様な医療データを必要とするデータ駆動型医療にとって、患者の安全性とプライバシーを損なわないことが課題となる。連合学習はデータそのものを交換することなく共同でアルゴリズムをトレーニングすることで、その課題の解決を目指す。台湾と米国で国境を越えたAIモデル構築研究は、連合学習の大きな可能性を示している。

関連記事:

  1. NVIDIA Clara Federated Learning – 分散協働学習が生む新たな可能性
  2. 脳腫瘍を識別するAIのプライバシー保護 – Intelとペンシルバニア大学のFederated learning
TOKYO analytica
TOKYO analyticahttps://tokyoanalytica.com/
TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
RELATED ARTICLES

最新記事

注目の記事