卵巣がんや膵臓がんはスクリーニング検査の確立が不十分で、早期診断に有効となる非侵襲的な検査法が待望されている。ペンシルベニア大学の研究グループは、血液サンプルより発せられる蒸気(VOC: 揮発性有機化合物)からがん細胞を嗅ぎ分ける「e-nose(電子の鼻)」を開発した。
ペンシルベニア大学医学大学院のニュースリリースによると、この研究成果は6月4日に開催される米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表される(抄録参照)。電子嗅覚システムは、すべての細胞から発せられるVOCの組成を検出するナノセンサーを備えており、AIアルゴリズムによって卵巣がんのVOCを精度95%で識別し、膵臓がんのVOCを精度90%で識別できた。
研究グループののひとりA. T. Charlie Johnson博士は「初期の研究だが、非常に有望な結果となった。毎年の健康診断で行われるような標準的な血液検査からがんのスクリーニングができるようになるかもしれない」と述べている。
同研究でペンシルベニア大学と協力している「VOC Health社」は、電子嗅覚システム技術においてCOVID-19患者特有のVOCを検出するモバイル機器開発も行っており、国立衛生研究所から2年間で200万ドルの助成金を獲得するなど、こちらの開発成果も期待されている。
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