医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例脳年齢を睡眠時の脳波で予測するAI研究

脳年齢を睡眠時の脳波で予測するAI研究

実年齢とは異なる、個人差のある老化や基礎疾患を反映した「生理的年齢」を測るAI解析手法が近年のトレンドとなっている(過去記事1)。以前にも紹介した米国の睡眠AIスタートアップ EnsoData社過去記事2)を中心に行われた「睡眠時の脳波から脳の年齢を予測するAI研究」を紹介する。

同研究は6月10日から13日まで開催された学会「SLEEP 2021」で発表された(抄録参照)。研究では、ポリソムノグラフィ検査で取得された睡眠時の脳波をディープニューラルネットワーク(DNN)で解析し、「健康な患者では実年齢との誤差を4.6歳で予測」、また「てんかん・脳卒中・睡眠時無呼吸・睡眠障害といった各種の基礎疾患によって、脳年齢の指数(BAI: Brain Age Index)が有意に実年齢と乖離する」ことが示された。

これまでにも脳波から患者の年齢をおおまかに推定して定量化する臨床研究例がみられたが、AIにより患者の脳年齢を推定する今回の研究成果は目新しい。研究グループは、脳年齢指数BAIが脳の健康状態を示すバイタルサインとなり、様々な疾患の診断バイオマーカーとなりうるとして、睡眠時の脳波から得られる指標の価値を強調している。

  1. 心電図AI解析が生理的年齢と長生きを予測する
  2. あらゆる波のデータから睡眠をAI分析 – EnsoData
  3. 睡眠段階を自動解析するAIプロジェクト「U-Sleep 」
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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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