昔から臨床現場では、細菌に感染した傷口から緑膿菌など特有の匂いを嗅ぎ分ける、といった経験的な知恵があった。近年のナノテクノロジーの発展により、微生物が放出する蒸気(VOC: 揮発性有機化合物)を「人工鼻」で識別する技術が実用化されてきた。
イスラエルのネゲブ・ベン=グリオン大学(BGU)からのニュースリリースによると、BGUのチームがカーボンナノ粒子(carbon dots: カーボンドット)を用いた人工鼻によって細菌の検出と識別を可能とする技術を開発している。成果はNano-Micro Letters誌に発表された。人工鼻はカーボンドットを塗布した高密度電極(IDE)が静電容量の変化を捉えることで蒸気を感知し識別する。そこに機械学習アルゴリズムの解析が加わり、細菌ごとに特徴的な揮発性化合物の「指紋」を識別可能となる。
人工鼻のプラットフォーム「C-dot-IDEs」は、堅牢で安定した性質、再利用可能、安価な構成といった特徴を有すると研究チームは考察している。人工鼻技術は今後、医療施設内での細菌の識別、細菌検査の迅速化、呼気検査への応用、食品の腐敗検出、有毒ガスの識別といった無限の可能性を秘めているとして、開発チームはイノベーションを加速させようとしている。
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